技術士二次試験(上下水道部門)合格(2024年度)

2024年度の技術士二次試験(上下水道部門)に合格しました。
受験される方への参考用に記載します。

 

状況
・平成**年度に技術士(機械部門)に3回目の受験で合格
(1回目口頭試験不合格、2回目筆記試験不合格、3回目合格)
・令和5年度に技術士上下水道部門)に1回目の受験で合格

 

はじめに
技術士試験を何度か受けてみて感じることがあります。
それは、運の要素が強いということです。そして、相性もあるでしょうが手の届かない試験でもないということです。(私にとっては技術士よりも、電気主任技術者三種やTOEICで高スコアをとるほうがよほど大変でした。なお、TOEICに関しては道半ばです。)
そのうえ、技術士は試験の透明性を疑いたくなる点があります。
論文試験と口頭試験になりますが、論文の字が読みづらいとか、口頭試験で顔が気に入らないとか、いくらでも難癖付けられるのでないかと心配になります。論文も自分の専門によって得意な題材と苦手な題材があると思いますし、口頭試験管が自分と合わない人だと辛いです(私も口頭試験不合格で落ち込みました)。
多くの他の資格試験のようにマークシートのテストも運の要素はありますが、それよりも遥かに運が強く影響すると思います。
それでも(だからこそ)、一定の評価を得ている試験だと思いますし、私も4回受験中3回は筆記試験通過しているため、やはり合格の確率は上げられるのだと思います。
これから頑張る皆さんへ少しでも参考になればうれしいです。


全般について
・受験申込案内はしっかりと目を通してください。
※多くの人が受験後に気が付きますが、受験申込案内は超重要です。(しっかりと評価項目の所を確認すれば、漫然と論文や口頭試験をすることが無くなるはずですので、申込書に記載のある「技術士コンピテンシー」についてしっかり理解しておく必要があります。)
技術士受験を応援するページSUKIYAKI塾(https://www.pejp.net/pe/)がおすすめです。
You tubeで「技術士」と検索すると有益な情報を発信している方々がいます。私も参考にしました。
・ブログも同じく、有益な情報を発信してくださっている方々がいます。「技術士+貴方が受ける技術部門」で検索してみてください。私も多数参考にさせて頂きました。


申込書
申込書(業務内容の詳細と経歴)は非常に重要です。
何故なら口頭試験での質問のベースになるためです。この申込書が良くないと口頭試験で不合格となる可能性が高まります。

自分の経験からアドバイスすると、業務内容の詳細は「難しすぎてもダメ」ということです。
貴方が書いた業務内容について、試験管も万能ではないため、試験管の基礎知識が無い可能性があります。特に、業務内容が他部門にまたがるような複合的で高度なものほど、理解されない可能性があります。
だからと言って、簡単すぎても通常業務となってしまい技術士として相応しくありません。
業務内容の詳細で口頭試験に係わる評価項目は
①コミュニケーション、リーダーシップ
②評価、マネジメント
です。(受験申込案内に書いてあります)
これらをアピールできるような業務が望ましいです。実態としては通常業務にあなたが工夫した点を2~3点入れるくらいの温度感で、簡単ではないけれど試験管に分かってもらえる「適度な」高度さが良いと思います。
なお、技術士は計画・設計・分析・試験・評価及びこれらに関する指導の業務 ですので、経歴の欄も「〇〇の計画」にするなど、表現も注意が必要です。

必要時間
申込書の作成には1週間(15時間)ほど要しましたが、もっと時間を使っても良いと思います。


筆記試験
論文はフォーマットの通りに書く
論文は実はそれほど難しくないです。参考書やネットで型を見つけたらそれをマネするだけです。手順は以下の通り。

①過去問とその回答例を参考書やネットで探します。
可能な限り探します。私は30本くらい回答例を探せました。雑誌等に乗っている場合もあります。
上下水道部門の場合は「水道公論」に回答例がありました。(多くの場合、私はあまり良い回答だと感じませんでしたが・・・) 
その他、例えば環境部門は「月間下水道」に回答例が記載されていました。
なお、ネットの回答例はあまり良くないものも多いですが、勉強を続けていると良し悪しが分かるようになります。

②回答用紙に書き写します。構成を覚えるためと後述する③のため、パソコンで書きます。
直す必要のないほど良い論文は手書きで書いてみます。(自分が回答用紙1枚を埋めるのにどれくらいの時間を要するかが分かるためと、手書きだと知識の定着が速いためです)
自分で書いてみると、意外と知らない漢字も多いなど新たな気づきもあると思います。
なお、原稿用紙はネットにあります。「技術士 答案用紙」で検索
※ポイントは、「合格原稿かどうかが自分で分かるようになること」です。そのために、受験申込案内の評価項目はしっかりと把握しておく必要があります。

③書き写したパソコン原稿を印刷し、分かりづらい点や自分で調査したことを基に、「自分だったらこうする」と朱書きで訂正していきます。修正したらまたパソコンで書きなおします。
※繰り返しですが、評価項目をしっかりと把握してく必要があります。

④キーワードだけ纏める。
 ①~③を20本、30本とやっていくと、型が身に付きます。型が身につくと文章はOKなので、自分の引き出しを増やします。
 そこでキーワード学習をします。
そのキーワードで挙げた技術の目的、効果、問題点、利点、費用、今後の展望など、箇条書きで書いていきます。
型を身に着けた後であれば、この箇条書きだけのキーワードだけで、文章が書けるようになっていると思います。
なお、キーワードのヒントは業界紙や管轄省庁ホームページ(上水道ならば厚生労働省(R5年度時点)、下水道ならば国土交通省)です。業界紙で受験年度の前の年(例えばR6年度に受験される方であれば、R5年度の業界紙)を参照します。問題作成に時間を要するため最新すぎてもダメです。話題になっていたテーマや管轄省庁で取り上げられていたテーマは技術士の論文で出題される可能性が高いです。

⑤可能な限りキーワードを増やし、そのキーワードに基づいて回答を作成する。
そして③のブラッシュアップをする。
できれば人に添削してもらうと勉強になります。 
私は「新技術開発センター」で添削をしてもらいました。安くはないですが、知人に頼むよりも客観的な視点で見てもらえますし、遠慮も要りません。

⑥自分が作った回答原稿とキーワード集を印刷して、繰り返し(できれば毎日)読みます。
 論文に違和感があれば③の通り修正します。日々の学習で興味を持った項目があればキーワードに追加します。

⑦当日
準備をしても、当然、全然知らない範囲の問題が出ます。その時は常識で考えて書きます。
自分にその試験問題の経験が無かったとしても、問題文を読んで「当然必要と思われること」を書いていきます。それは、地域住民と調整するとか、PDCA(計画→実行→チェック→改善)を行うとか、人、モノ、カネについての調整や確認だとか、業務経験があれば予想できると思います。
※逆に言うと、ここで自分の経験したこと以外の業務手順の予想が出来ない場合は技術士のレベルではないということになります・・・

勉強時間
3時間×60日=180時間。かなり少ないほうだと思います。


口頭試験
①ネットや参考書で質問例を集める。
②質問例と貴方の業務経歴から質問の回答例を作成する。
その際に、コミュニケーション、リーダーシップ、評価、マネジメントの視点を入れるよう注意する。
試験管の採点用紙はきっとコミュニケーション、リーダーシップが〇点など項目ごとに分かれています。ここが非常に重要です。
③技術者倫理と継続研鑽につても話せるよう回答例を作ります。
論文では受験する年の前年度の情報を集めますが、口頭試験では最新の情報を集めて、試験管に継続研鑽していることをアピールします。
それに比べたら重要度は落ちますが以下についても準備しておきます。
③業務経歴を1分~3分で話す練習をする。
④筆記試験のご自身の解答で補強すべき点を用意しておく。

できれば、こちらも誰かに見てもらったり、自分の口頭試験の練習の様子をビデオに録画してもらって、自分で確認すると良いです。(今回、私は人に見てもらいませんでしたが、前回の機械部門の時はそのように練習しました)

準備時間
1.5時間×30日=45時間
筆記試験の合格後から準備しました。(もちろん、早いに越したことないですが、モチベーションの問題です)


口頭試験当日
ここまでやったのなら、あとは運次第です。
私は2時間前に会場の最寄り駅につくようにし、近くのファーストフード店でコーヒー飲みながら、想定Q&Aを少し読み返しました。後は音楽聞いていました。
そして、試験本番では当然ですが、想定と異なる質問が来ましたし、回答できなかった質問もありました。その結果、不合格となる人もいると思いますし、合格になる人もいると思います。


使用教材
技術士二次試験「上下水道部門」対策<論文事例>&重要キーワード(日刊工業新聞社
 技術士試験のコツ、きちんと練られた筆記試験の過去問回答例、キーワード学習も記載されている優れものです。
技術士二次試験「上下水道部門」解答論文事例100選(日刊工業新聞社
 少し古い本ですが、論文の参考にしました。
・トコトンやさしい下水道の本(日刊工業新聞社
 下水道全般について学習するために購入しました。上下水道と一口に言っても、水質、設備、土木、もしくは経営など様々あると思いますので、網羅的にカバーするために使いました。一読して出題されそうだと感じたところをキーワード学習しました。
・水環境工学オーム社
 根拠を確認するために使いました。一読してからキーワード学習の利点や目的などの記載に使いました。教科書としては、読みやすいと思います。


最後に
出題の予想は難しく、かなり広範囲の勉強がいるように思いますが、実は思っているほどではありません。
上記の筆記試験⑦でも書きましたが、想定した問題が出題されることは稀で、試験で問われているのは例えば、「お客様から〇〇について急な相談を受けた。その場で完ぺきではないまでも70%くらいの精度で手順や利点などの説明をする」そんなことが出来る人ですか?と言うことです。
※そのためにもちろんカードは必要で多いほうが良い(勉強は必要不可欠)ですが、極論、経験豊富で勉強をしてきた技術者なら論文の型を覚えれば筆記試験対策は終わりです。1日で勉強終わりです。
口頭試験についても「成果物(あなたの業務内容の詳細)に対して、お客様の質問に答えられますか?」と聞かれています。
評価項目に添った回答が必要なので注意は必要ですが、そこまで身構える必要はないのです。

そして、最初に書きましたが運の要素が強いです。
不合格でも過度に落ち込むことは無いですし、試験の性質から勉強してきたことは貴方の業務に直結することばかりだと思いますので、無駄になることはありません。

資格試験は受かってナンボですが、落ちたからと言ってその知識が無くなる訳ではないです。
古くて恐縮ですが「筋肉が裏切らない」のならば、勉強だって当然裏切らないです。