同志少女よ敵を撃て 著者:逢坂冬馬 出版: 早川書房

初版2021年

 

第二次大戦中のロシアを舞台としたお話で、主人公はロシアの女性狙撃兵です。

ロシアは日本から近い割には多くの日本人にとって馴染みの薄い国かと思います。


ちなみち、私はロシアが嫌いです。その理由は、ロシアへ一人で旅行した際にタクシーのぼったくりにあったためです。その場でもかなり抗議して、その後、警察にも助けを求めましたがダメでした。基本、英語が通じないし、他の途上国のような可愛げもないし、全体的に重苦しい雰囲気だし。見てくれが立派なだけで、中身が無く、自分のことしか考えていない上司のように腹が立ちました。

 

小説の話に戻ります。
そんな自分が読んだせいか、ロシア側に感情移入はできませんでした。
ドイツとの戦争を描いていますが、戦争なんてどっちも極悪ですし、主人公はドイツ兵にたいした理由もなく村を襲われ家族や友人を亡くしていますが、狙撃兵になった主人公はドイツ兵を100人以上葬っています。

主人公が敵兵を撃った時も、私は達成感や爽快感のようなものは無く、つまらない仕事を仕方なくこなしたような虚しさにも似た感情を抱きました。
ルパン三世石川五右衛門のセリフで「また、つまらぬものを斬ってしまった」とありますが、五右衛門もそんな心境だったのかとこの文章を書きながら感じました。

 

ただ、表現は素晴らしく、そんな過酷な環境下での日常、人とのつながり、またロシア独特の重苦しさも伝わってきます。自分まで冬のロシアにいる気分になりました。

なんだかんだと書きましたが、素晴らしい小説でした。
良い小説は違う世界に行ける点が素晴らしいですね。

1940年代のロシアに行きたい方にはお勧めしたいです。

2024/2/15