2020年マンション大崩壊 文芸新書 (2015年8月20日第一刷発行)著:牧野知弘

【 】以降は個人的なメモ書き。

 

■P-61 割に合わない新築マンション購入

一般に新築マンションの価格には、分譲価格のうち約三十%程度の経費が含まれているといわれます。土地を仕入れるのにあたっての諸経費、土地の整備費、土壌汚染や液状化がある場合はその対策費、既存建物の解体費、建物を建築する際にかかる近隣対策費、電波障害対策費、販売するための販売センター設置費、維持管理費、販売会社に販売業務を委託する委託費、デベロッパーとしての本部経費などを積み重ねたうえで、利益分を上乗せして販売するからです。

 

■P-65不動産のプロの間でよく話題になるのは、マンションは築5年から10年の中古マンションを購入するのが一番お得ということです。設備機器はほぼ最新のものであるし、まだ修繕や更新は必要としません。建物は既に存在するので、新築物件を買う際のような「青田買い」に伴うリスクもありません。

<中略>中古マンションの購入であれば、取得に伴うコストも仲介業者に支払う仲介手数料(取引価格の3%+6万円)が宅地建物取引業法で定められていますので、それ以上の負担はありません。

【参考】皆さんがマンションを購入する場合の参考に。今はマンション買うつもりはなくとも、結婚や子育て介護などで、自分の自由に生活できないこともあると思うので。

 

■P-74国税庁が示す建物の用途別耐用年数によれば、鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は47年ということになりますが、現実にはこの年限を超えたマンションは世の中に多数存在しています。この数値は減価償却の計算を行うために定められた数値であり、実施の建物の寿命とは無関係だからです。では現実的に建物の寿命とはどの程度のものなのでしょうか。早稲田大学の小松幸夫教授の行った調査によれば、鉄筋コンクリート造のマンションの寿命は68年とされます。<中略>建物自体が朽ち果てることなく存続できる年限と言い換えてもよいでしょう。

【参考】減価償却的には47年。寿命68年。※補修しながら120年との資料もある。

 

■P-82空き家率30%超えがスラム化のはじまり

野村総合研究所の発表によれば、このまま住宅の滅失・除却が進まないと仮定すると、2035年には日本全国の空き屋率は32%<中略>

2007年に財政破綻した北海道夕張市の場合、現在の空き家率(2008年調査)は33%<中略>

ミシガン州デトロイト市は2013年7月に連邦破産裁判所に連邦破産法第9条に基づく破産申告を行い話題となりました。このデトロイト市の空き家率は29.3%。<中略>警察官、教員等のレイオフ(解雇)が起こり、治安はさらに悪化。市内は殺人、強盗などの犯罪件数が激増、公共サービスは次々に削減され、市内の街頭の4割が機能せず、7割の公園が閉鎖、それが犯罪の発生に拍車をかけるなどの混乱を引き起こしました。<中略>

デトロイトは、産業構造の変化や人種問題も絡み、人口が減少、空き家が増加、犯罪の激増という経緯をとりましたが、日本では問題の根幹に少子・高齢化問題があります。デトロイトのように極端な「犯罪都市」への転落といった姿は考えにくいものの、人口の減少や高齢化は確実に自治体の財政を蝕み、街の荒廃につながるという点では共通の問題を抱えているといえます。

【参考】空き家率30%が「危機への警鐘」

 

■P-92国も老朽化マンションの建て替えを促進するために動き始めました。2014年12月には「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」を制定しました。この改正によるポイントは「耐震性」に着目し、耐震性が不足している老朽マンションについては、区分所有者の5分の4の賛成があれば土地建物ごと売却できるように定めたものです。<中略>この改正によってどれだけの建替えが進むか注目されますが、効果は限定的なものとなりそうです。まず、5分の4に決議要件が緩和されたとはいえ、高齢者が多数を占める老朽マンションではこのハードルは決して低くはないからです。<中略>開発を請け負うデベロッパー側も及び腰にならざるを得ません。私もデベロッパーに在籍した経験がありますが、建て替えを実際に実行しようとすると、買取価格は相当低いものでないと「割が合わない」と考えるからです。既存の建物を取り壊して、区分所有者の移転先を確保、更地にして再開発するには3年から4年の歳月が必要となります。その間、高齢者の方に相続が起きる、あるいは消え財状況等に変化が起こる、様々なリスクと向かい合わねばなりません。「買受計画」が都道府県の許可であるだけに、開発についてどこまで自由度があるのかにも不安が残ります。

P-126建替えは「ほぼ不可能」なマンションという建築物<中略>容積率緩和の飴玉だけで、このただでさえ困難な建替えに挑戦するデベロッパーの数は限られているように思われます。

【意見】改正前は、全員の賛成がなければ売却できなかった。法改正は最近の出来事。

かなり条件が良くないと民間主導の再開発は期待できない。

 

■P-132高さが60メートル以上である建築物を「超高層建物」、そのうちマンションという住居形態を有するものを、その建物の形状からタワーマンションと称するようになったものと解釈されます。

【参考】タワーマンションの定義。

 

■P-149販売をするデベロッパーの立場から言えば、販売時点で高額の修繕積立金を徴収することを説明すると、多くの顧客が逃げてしまうことが分かっているので、あえて段階を設けて最初の負担が小さいように見せかけているのです。国土交通省が2011年に公表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」でも20階建て以上の高層マンションの修繕積立金の額は1平方メートル当たり206円としています。それに対してスタート時点は86円というわけです。

【補足】タワーマンションの話。エレベーターや外装工事などタワーマンションは修繕費が高額。最初から修繕費取っていると売れないので段階的に上げている。

 

・・・以下要約だけ記載。

 

タワーマンション

・合意形成が困難

高層階は富裕層、下層階は普通の住民

高層階に投資用として購入した中国人

デベロッパーも東京のタワーマンションシンガポールで先行販売をする。投資マネーが頼り。 

 

■P-177定期借地権

・1992年施工。バブルで土地が高すぎて買えないので、土地はレンタル。土地代が分譲価格に入らないのでその分価格が安くなる。(レンタル期間は50年以上)

・一般的にマンションは土地代3割、建物が7割。

よって、購入費は3割安くなる。ただし、借地代が必要。建物は減価償却で将来価値はゼロになる。

・定借マンションを購入する住民は、マンションとしての資産価値の上昇には期待してない。

 積極的に住みつぶそうとする。

・現在は土地が安くなり、また期限満了時に更地化して地主に返却しなければならないため、不人気。

・残存期間が少ない中古マーケットでは特に価値が下落。

・定借マンションは建物修繕が最も厄介。(自分の資産にならないので、住民はだれも修繕したがらない)

・区分所有者が亡くなって相続が発生しても、誰も引き取らない。(どんどん価値が無くなるため。解体費用を追加負担させられる恐れがあるため)

・定期借地権の期限到来時に、解体に必要な積立金が不足(積立不足)

 

■P-191マンション相続

・住んでいなくても固定資産税、管理費、修繕積立金を負担し続けなければならない。

 

■P-200解決案

・2000年代前半、節税対策に賃貸用ワンルームマンションが大量販売(毎年9000戸前後の供給)。

ワンルームマンションを借りる主体の若者は減少。単身高齢者で住宅に困っている層は、一般的に低所得で賃貸の未納・滞納、孤独死のリスクあり。→空き家のまま放置。

→外国人旅行者に短期間リース。東京五輪開催時にはホテル数不足。

→介護マンション等他用途への転用。今後確実な需要の増加が見込まれる高齢者施設

・老朽マンションの上層部分を取り壊して耐震補強をして耐震性をクリアする。

 →高齢者施設、保育所を設置。

・P-207マンションをビジネスホテルに用途変更

・P-209 空き住戸にトランクルーム

・P-214「区分所有権」にこだわっていると、問題の解決はほぼ不可能

 国や自治体などが出資して、マンションを土地建物ごと買い上げる。

 戸鏡壁を取り払って、高齢者用のリハビリ施設や検診センターに衣替えする。新しくハコモノを用意するよりは資金負担は安い・・・

 【 】どうしようもないマンションは、税金で買い取ることになる。

・P-218区分所有権はそのままにして、相続が発生する、または途中で売却する場合は機構(自治体)にあらかじめ定められた金額で売却する。

・P-220空き住戸の状態が何年も続くような住戸に対して、管理組合議決の議決権を一時「凍結」するような規約。法律的にはかなりハードルが高い。

・P-225新築住宅と中古住宅を同じ土俵に乗せて、消費者が比較検討できるようにマーケットを整備していく施策

 

【所感】

様々なアイデアあるが、どうにもならないマンションの最終的な結論は税金で解体。

誰も悪いことをしていないが、老朽マンションが増加しその買い取りや解体のため税金が投入されそう。

1棟、2棟の話ではない。金持ち自治体の東京でさえ、少子高齢化が進む中でそんな財源あるはずない。

 

解決策は大きく2点。

・1 お金。極論、金があればすべて解決する。

・2 マンションの新築抑制。中古の活用。

 例えば、新築税の導入?

新築価格が上がり、相対的に中古がお得になる。新築が売れなくなり、空き家減る。

都民やデベロッパーからは反対が予想される。

 

 もっとも現実的なのは、先延ばし。

幹線道路沿い、かつ耐震不足マンションなどの本当に問題のあるところだけ、ちょろちょろっと補助を出して、抜本的なことは後の世代で。

 少子高齢化年金問題と同じで、分かりきっていることも問題が爆発するまで手をつけられないようなので・・・デトロイトのように犯罪都市になってから本気で検討する